校長あいさつ

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カテゴリ:04-先生が足りない(-_-;)!~補欠授業奮闘記
2023年 10月 12日 (木)  本日の補欠授業~2年生活科

 久々の補欠授業レポートです。でもまあ,授業といっても,主に私がしたことは,見守りと用具(刃物系)の整理提供,技能的なちょっぴりアドヴァイス。
 生活科の学習指導要領では下に示したような学習内容が示されています。遊ぶ活動を通してその面白さに気づいたり,みんなと楽しみながら遊びを作り出したりする……。ホイジンガが80年以上も前に提唱した「ホモルーデンス(=遊ぶ人)」の考え方に依るところが大きいかな……というものです。一部,図画工作科の造形遊びなどと指導の内容が横断する側面があります。
 児童の皆さん,風などで走らせる,飛ばす,爆(は)ぜさせる,転がす……動力のもとになるものに合わせた仕組みを生かして,様々な「遊びに使うもの」を思い思いに作りながら,それを使ってどう遊んだら面白いかを,みんなで相談していました。
 なんでわざわざ,そんな「遊び」みたいなことを学校でやらせなきゃいけないんだ!?なんて声も聞こえてきそうです。実は,こういうことの積み重ねや,それを体系づけて指導していくことで,VUCAの時代を生き抜く資質・能力が身に付くといわれています。ということをきちんと価値づけて,大人たちが受け止める必要があるな……と思っています。

●学習指導要領上の位置づけ
2 内 容
1の資質・能力を育成するため,次の内容を指導する。
〔学校,家庭及び地域の生活に関する内容〕
(6)身近な自然を利用したり,身近にある物を使ったりするなどして遊ぶ活動を通して,遊びや遊びに使う物を工夫してつくることができ,その面白さや自然の不思議さに気付くとともに,みんなと楽しみながら遊びを創り出そうとする。

公開日:2023年10月12日 16:00:00
更新日:2024年05月14日 10:20:45

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2023年 2月 21日 (火)   “出動”記録~5年生 道徳科「友情,信頼」

 本日の緊急出動(補欠授業)は5年生の道徳科でした。
 今日のように“飛び込み”で道徳科の授業に入るときは,まず最初に“そのクラス”の「道徳科授業のお約束」について確認します。担任の先生がいつも,どんな風に授業をしているのかを把握しておくことで,子供たちの声に耳を傾けやすくできるからです。
 今日は私のほうから次の二つを「お約束」として掲げました。
 その1:「本音トーク」を成立させる(そのためによく聴きよく語る)
 その2:「突っ込み」を入れる視点を大切に
 高学年ともなると,ただの“お伝え道徳”とか“押しつけ道徳”は通用しません。と思って,こういうモードで始めたのですが……。

 今日のお題は「B 主として人との関わりに関すること」の中の「10 友情,信頼」。これを『ミレーとルソー』という教材で描かれた友情物語を通して考える,というものです。
 ちょっと美術が好きな人なら,「ああ,あのミレーね。ルソーってどのルソー?」くらいからスタートできるのですが,たぶん無理なので,“実在した人物感”を出すためにお2人の肖像写真をネットから拾って教室に向かいました。
 児童の皆さん,いつものように新鮮な気分で迎え入れてくれます。5時間目だったので昼休みの「なわとび疲れ」をしてるだろうに……。給食の時とはまた違う,道徳科の空気を作ってくれました。(素晴らしい!)
 「普通のクラスメイトと親友って違うと思うんだけど,親友レベルの子だからこそ,してあげること,あえてしないこととかって,ある?」
 ちょっと難しい導入の問いになっちゃったかな……,と思っていたら,そんな心配をよそにスーッと手が上がりました。(ウォッ! すごいな……)
 「どんな感じですか?」
 「ほんとに大切な友達の場合は,落ち込んで見える時なんか,すぐに声かけずに,注意深く見守るみたいにするかもしれません」
 「な~るほどね。普通の友達の場合はすぐに声かけちゃったりするけど,そうでない場合は逆にちょっと,間をあけたり,距離を置くわけね?オトナですねぇ。みんなもそんな感じ?」(皆さん,うんうんなずく)
 「でもさー」(別の子)
 「でもさー,何?」
 「その子がほんとに“イタイ”くらいに落ち込んでたら,速攻,声かけますよ」
 「そうか,“イタイ”ね,それ,わかりやすいね。そうか,その子とのカンケーとか,異変の中身によって声のかけ方,変えるわけね。なーるほど……」
 なんていう感じのことを念頭に置きながら教材を読み進め,本題に入りました。
 社会的な立場とか経済力とか健康状態とか,さまざまな条件が入り組む中でやり取りされるモノやお金(という目に見える行動),その中で,人生をかけて向き合うそれぞれの芸術への思い……。児童の皆さん,その背景で行きかっている二人の心の中に分け入りながら,さまざまな考えを聞かせてくれました。

 時折,「汚れつちまつた」オトナの立場から,私が意図的に入れる突っ込みや揺さぶりにも,鋭い視点で応えてくれる場面があり,(ウーム,すごいな……)とココロの中で何度もつぶやいてしまいました。

●過去の道徳“出動”記録~4年生「勤労,公共の精神」

 

公開日:2023年02月21日 16:00:00
更新日:2024年05月14日 10:15:41

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2023年 2月 14日 (火)   今日は1年生の外国語(英語)

 「校長先生コウチョウセンセイ,大変です今日も人が足りません!ALTの先生と一緒に英語,お願いします!」
 (うおっ!人生初英語授業!?頑張ります)
 本日のお題は「じゃんけん」。様々なお国のじゃんけんの掛け声を紹介した後,英語で「じゃんけん+あいさつ」のペア・ワークをしました。
 続いて取り組んだのは,じゃんけんで負けた人が,折りたたんでだんだん狭くなっていく新聞紙に乗るゲーム。
 「Rock, paper, scissors! 1・2・3!」
 ……児童の皆さん,楽しみながらじゃんけんとあいさつの活動に取り組んでいました。

 ちなみに三浦半島では「じゃんけんぽん」ではなく,
 「チッ,ケッ,タ!」でじゃんけん,してました。
 蹴とばす」もこちらでは「けっぱぐる」です(笑)

★本日は急な出動だったため,画像資料,ありません(-_-;)

公開日:2023年02月14日 16:00:00
更新日:2024年05月14日 10:18:58

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2023/2/10 (金) ミシン学習のお手伝い~5年生

 「校長先生コウチョウセンセイ,大変です!人が足りません!」(それ,いつものことでしょう(苦笑))と心の中で呟いていたら,今日の人手不足は,ミシンを使った授業の補助,とのことでした。子供たちが(先生も?)不慣れなのに加えて,危険が伴うので,複数で指導に当たることが多いのです。
 「あっ,それね,早く言ってくれればいいのに~,私,日常的に使ってますから(笑)」
 いつものようにエプロンをかけて“出動”しました。
 本日のお題は「方向転換」と「返し縫い」。
 使い慣れてしまえば何でもないことなのですが,ミシンの仕組みを理解して,縫い方に反映させるまでは,アタマの中であれこれ?!?!!???が飛び交います。(こうすればこうなる,こうしないとこうなる,こうするためにはこうする……)
 家庭科の学習は「調理」にしても「布を用いた製作」にしても,プログラミング的思考の連続です。縫い糸の取り回し,電源のon-off,布おさえの上げ下げ,布の進行方向に合わせたセッティング,方向転換の手順……,児童の皆さん,作業目的に合わせた様々な操作を繰り返していました。きっと,頭の中,ぐるぐる回っていたと思います。

●関連情報「ガイアの夜明け」(テレビ東京系)
なぜ今、ミシンが復活!入荷待ち1カ月も
https://www.tv-tokyo.co.jp/gaia/backnumber4/preview_20230210.html

●学習指導要領上の位置づけ
B 衣食住の生活

 次の1から6までの項目について,課題をもって,健康・快適・安全で豊かな食生活,衣生活,住生活に向けて考え,工夫する活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
(5) 生活を豊かにするための布を用いた製作
ア 次のような知識及び技能を身に付けること。
(ア) 製作に必要な材料や手順が分かり,製作計画について理解すること。
(イ) 手縫いやミシン縫いによる目的に応じた縫い方及び用具の安全な取扱いについて理解し,適切にできること

公開日:2023年02月10日 12:00:00
更新日:2024年06月05日 12:40:59

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2022年 11月 25日 (金) 本日の補欠出動は「道徳科」~勤労,公共の精神

 ギリギリ以下の職員体制で日々の授業を回している関係で,コロナその他で職員が休んで授業に穴が開くと,すぐに出動要請が入ります。本日は4年生の道徳。お題(内容項目)は「勤労,公共の精神」
 教材の主人公は家業のお手伝いを頼まれる子供。はじめはイヤイヤやっていたのですが,だんだん仕事自体が楽しくなって……というあらすじです。今日は余裕がなかったのでさっと教材を読んで,即座に授業の流れを組み立てました。
 学習指導要領『解説』と教材の往還はもちろんしましたが……。でも,これも場合によっては弊害になるので要注意,とする学者もいます。教材で描かれている道徳的価値とその周辺をニュートラルに受け止めて,指導者の感性を通して,描かれていることから様々な「よさ」を読み取って,指導に生かした方が良い,という立場からです。
 となるとなおのこと,この教科書,ネタバレしすぎなんだよな……(-_-;)
 みんな,おうちのお手伝いって,ただのお手伝いなの? それとも仕事?,お手伝いと仕事って,違うよね,報酬制? 月ぎめのお小遣いへの反映?……というようなことから始めて,彼らのリアルな声を聴き合いました。児童の皆さん,普段の生活の中で,「勤労」自体が面白くなったり楽しくなったり,そのこと自体に価値を見出して誰かの役に立つことにつながっている,なんてことが結構あるらしいです。そんな話をたくさん聞かせてくれました。

 最後に聞いてみました。「みんな,メアリーポピンズのお話,知ってる? ディズニーの映画にもなってるけど,あ,第1作目の方ね……」
 パレードでは見たことあるけど,映画の方は……という子がほとんどでした。まあ,無理もないかな,50年以上も前の作品だし……(笑)
 劇中,ジュリーアンドリュース扮するメアリーポピンズとバンクス家の子供たちが出会って間もない場面で歌われるのが「A Spoonful of Sugar」(苦いお薬でもスプーンひとすくいのお砂糖でちょっぴり甘くすれば飲めちゃう……みたいな)。散らかった子供部屋の“お片付け”をするシーンで歌われる名曲です。「辛い仕事にも面白いところがあるはず。それを見つけたら、どんなことでもゲームになっちゃう!」
 大人になってからも「勤労」は続きます。こんな風に魔法にかけられたみたいにして楽しく働くことができれば,それはそれで幸せなのですが……。あんまり楽しく働きすぎていると,最近では「それ,ポジティブブラックでしょ」などと言われてしまうこともあり……,悩ましいところです。

 今回も飛び入り授業者を快く受け入れてくれた児童の皆さんに,感謝です。

公開日:2022年11月25日 11:00:00
更新日:2024年05月14日 11:29:00

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2022年 10月 24日 (月)  成長しました~1年生の給食タイム

 担任の先生に代わって、1年生の給食の時間に教室に入りました。給食の時間も立派な授業なので,補欠が必要なのです。学校の先生にはだから,昼休みというものがありません(休憩時間は放課後に確保)。
 児童の皆さん,4校時の授業を終えた、そのあとの切り替えが見事でした。授業の後片付けを手早く済ませると、すぐに給食の支度を開始。あっという間に配膳が整い、みんなで「いただきます」をすることができたのです。
 食事中も皆さん「黙食」を徹底しており,えらかったです。ホントなら「今日のバーベキューチキン,ちょっぴりカレー風味でおいしいねぇ……」とかなんとか,言葉を交わしながら食べたいところだと思うのだけど。皆さん身振り手振り,アイコンタクトで,「おいしいね」を共有していました。
 食後のお掃除タイムもてきぱきと進めていました。半年間の成長ぶりのすばらしさに目を細めるばかりでした。

公開日:2022年10月24日 11:00:00
更新日:2024年05月14日 11:32:57

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2022年 7月 6日 (水) ステキなファッションショー~2年 図工

 補欠,というよりは,一定期間,2年生の図画工作の授業を担当しています。今日はビニルなどの素材で作った,様々なコスチュームをそれぞれ身にまとい,ステキなファッションショーを開催しました。
 ウォーキングまでは設定できませんでしたが(これ,取り入れたらもっと皆さん工夫したかも(笑)!),お立ち台を用意してポーズを決めるところまで,BGMを流しながら,みんなで楽しみました。児童の皆さんが決めるポーズは,それぞれの作品と絶妙にあっており,すごいなぁ,と思いました。
 作品づくりにかける気持ちや,思いと,それを身に付けて主役になった時のポーズ……低学年ならではの,まさに「体全体」で楽しむひとときになりました。

●学習指導要領上の位置づけ
「A表現」(1)
イ. 絵や立体,工作に表す活動を通して,感じたこと,想像したことから,表したいことを見付けることや,好きな形や色を選んだり,いろいろな形や色を考えたりしながら,どのように表すかについて考えること。

「A表現」(2)
イ.絵や立体,工作に表す活動を通して,身近で扱いやすい材料や用具に十分に慣れるとともに,手や体全体の感覚などを働かせ,表したいことを基に表し方を工夫して表すこと。

「B鑑賞」(1)
ア. 身の回りの作品などを鑑賞する活動を通して,自分たちの作品や身近な材料などの造形的な面白さや楽しさ,表したいこと,表し方などについて,感じ取ったり考えたりし,自分の見方や感じ方を広げること。

〔共通事項〕
「A表現」及び「B鑑賞」の指導を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア. 自分の感覚や行為を通して,形や色などに気付くこと。
イ. 形や色などを基に,自分のイメージをもつこと。

公開日:2022年07月06日 20:00:00
更新日:2024年05月14日 10:23:35

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2022年 6月 1日 (水)  4年 道徳科授業『かさ』~思いやりのリレー

 今日の緊急出動(補欠授業)は4年生の道徳でした。
「校長先生コウチョウセンセイ,昨日の1年生の,あの割りばしとかどうですか?」
「あれは低学年向けの題材なんだよな,できないことないけどな…。中学年の造形遊びは“場所”に働きかける,だからなぁ……ちょっと無理があるかなぁ……。道徳なら単発でできるかも。担任の先生には申し訳ないけど,道徳科にします」
 と,あさイチでバッターボックス入りが決まり,週案に記された教材名を確認,いつものアナリーゼ(後述)を始めました。
 お題は内容項目「B主として人との関わりに関すること」の「7 親切,思いやり」。まあこういうのは普通にやったら,人には親切にしましょうね大切なことですから,で終わってしまう,面白くもなんともない展開になってしまいます。なので,主人公の“普通さ”(休日の水やり当番をサボっちゃいたいんだけどサボり切れずに……という“あざとイイ人”?)を前面に出して,そんな子が,思いがけず他者の思いやりに触れたらどうなるの?,みたいなところに児童の皆さんが親近感をもって教材と向き合えるように,と考えました。(でもなぁ,この教科書,返す返すも最初からネタバレしすぎちゃうんだよなぁ……。冒頭から,「思いやりのリレー」とか掲げちゃうし……)

 ある程度の「導入」(最初の“つかみ”)をあらかじめ考えて教室に入ります。いつものようにウエルカムの空気。  (ありがたい。急に決まったのに,なんでこんなに温かく迎えてくれるの……?)
 緊急出動用に用意してあったチョークフォルダと何色かのチョークをケースから取り出して,黒板の粉受けに並べようとすると……すでに写真のように準備してくれていました。
「黒板掃除の当番が用意しました。いつもやってることですけど…」(ウームすごいなぁ……)
 この,係の児童や学級からにじみ出てくるようなホスピタリティーを“枕”にして,授業の導入につなげたことは言うまでもありません。

 この“ウエルカム・チョーク”に象徴されるように,児童の皆さん,飛び入り授業者である私からの,つたない問いかけに,鋭いレスポンスで豊かに応えてくれました。クラスの半数近い皆さんが,様々な局面で発言してくれたと思います。
 これまで,道徳科の授業の指導助言は何百回もしてきましたが,道徳科の授業内容や指導テクニック以前の問題として,「学級の健康状態」をよく話題にしていました。どんなに良い教材,指導テクニックがあっても,「学級の健康状態」(安心して発言できる? 聴き合える関係ができている? 一人一人に自己肯定感,自己有用感が育っている?……)が望ましい状態で維持できていないと,道徳科の授業は成立しません。
 逆に,進め方が今一つでも,日頃の学級指導の成果が存分に表れて,子供たちに助けられる形で成立する授業も数多く見てきました。

 児童の皆さんの発言をあれこれつなぎながら,教材の中で飛び交っている思いやりのベクトル(“傘”に象徴されている?)や,その“リレー”のありようを確認しました。
 雨降りの2日間でちょぴり変わっていった“あざとイイ人”であるフツーの少女と,児童の皆さんそれぞれが,“自分”を重ねて考えることができたら,よかったのですが……。
いよいよ梅雨入り,傘の季節です。

公開日:2022年06月01日 11:00:00
更新日:2024年05月14日 10:24:35

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2022年 5月 31日 (火) 1年生造形遊び~いろいろ ならべて

 「校長先生コウチョウセンセイ,授業の補欠,お願いできませんか?,1時間目は学年で何とかするので,そのあと,3時間目くらいまでなんですけど……」
 (ムムッ,1年生か。お道具箱あるから図工で何とかなるかな,でも1コマだけじゃすまなそうだからな……ここはひとつ,よいチャンスだし……)
 とばかりに,「造形遊び」(図工)にチャレンジすることにしました。幸い,市の造形教育研究会が研究用に開発した“カラー割りばし”セットが手元にあったので……。
 ところで,「造形遊び」って何?というのがまず気になるところだと思います。この学習内容は学習指導要領にきちんと位置付けられているものです。(後述)

 活動開始前に児童に話したのは,次の2つだけでした。
 「“わりばし”だけど,“わりません”」
 ( “割ってみる”という創造的な活動もそれはそれで価値あることなのですが,ここではオトナの都合で封印)
 「(お花や犬猫などの)“え”はかきません。でも,形をつくるのはOKです。こうして並べたり,クロスさせたりしていくと,どんな形ができ……,あっ,イケナイいけない,ネタバレになっちゃうから,あ・と・はぁ,みんなでやってみよう!」
 (この「絵はかきません」が重要なポイントになります)

 上のような前説を,わざとじらすようにしながらお話して……この“じらし”が大切。じらしてじらして「はやくつくりたい!!!!」気分がピークに達したあたりで「スタート!」宣言をすると,子供たち,大人の予想をはるかに超えた力を発揮します。

 私が発した「クロス」という語を拾ったのか,クロスから井桁に発展するグループがあらわれました。こういう文化はどんどん伝播していきます。あっという間にあちこちにタワーの乱立が……。でも,よく見ていくと,色の選び方に何か彼らなりの意味があったり,クロスのさせ方にバリエーションが加わったりしていきます。さらには構造上の必要から,土台部分に補強をしたり,装飾目的?なのか,先端部分にたくさんの材料を差し込んだり……。

 タワー組とは別のグループでは独自の文化圏を構築しています。長くつなげる,つなげながら蛇行させるなど。さらにクロスさせた形を連鎖させていく,それも色の組み合わせを工夫しながら……なんていうグループも。「これ,このまま玄関ホールに飾りたいくらいだねぇ……。写真だけは撮って,とっておきましょうねぇ」

 「つくる」活動が一段落する(煮詰まる?)と,今度は子供たち,自分たちがつくったものをあれこれ眺め始めます。大人の言葉でいうところの「鑑賞」がどこからともなく,自然に始まるわけです。
 自分たちの背の高さにも迫るようなタワーを上から覗き込んだ児童,「すごいよすごいよ!」と,私を呼びに来てくれました。ここでもたくさんシャッターを切りました。ここまでは予想してなかったなぁ……(コドモを侮ってはいけない)

 床いっぱいにランダムに広がった“色の線分”と戯れることを楽しんでいる子供たちもいます。文字通り「体全体」(低学年の重要ワード)で色を感じ,色のシャワーを楽しんでいる様子。実際,カラー割りばしの塊を投げ上げて散らかる様子を楽しんだり,散らかった上でゴロゴロ転がったりしていました。

 ひとしきり,活動が進んだあたりで自然発生的に“お片付け”が始まりました。……と思ったのはオトナの見識違い,でした。「新品のクレヨンみたいに色の順番ができたねぇ」(大人語だと=色相の順番に並べててすごい)と声を掛けたら,子供たち,「これはねぇ,お店屋さんなんだよ!きれいでしょ!」(うわっ……しまった)
 子供たちの活動には常に,子供たちなりの“意味”があって,それは常に創造的な方向に向かっている。オトナの事情で解釈すると,時として大きな誤りであることを思い知らされてしまう……。そんな瞬間でした。

 中休みも終わりに近づき,お片付けフェーズに入ります。今回は色分けだけを指示したのですが……。
 この作業も注意深く見ていくと,自然発生的なグループごとに様々な工夫をしていることが分かります。 同じ色を拾い集める方式,色ごとにエリアを作っておいて束からその色を抜き出す方式……。子供たち,自分たちなりに工夫しながら作業を進めます。
 この“お片付け”だけを単体で取り出すと,どうしたら効率よく片づけられるか,をテーマにした「プログラミング的思考」を働かせる授業なども成立するねぇ……なんていうことを,見学に駆けつけてくれた先生とお話ししていました。

 普通のオトナから見ると“ちょっと見”は,ただ材料を与えて遊ばせているだけ,に見えてしまうのかもしれません。でも,これを学習,資質・能力の育成という視点で見ていくと,あちこちで様々なことが起こっていることが分かります。その,さまざまなことをどんな風に価値づけて,指導・評価していくか,というのがわれわれ指導者には求められているのだな……。そんなことを改めて確認することができた授業になりました。

●そもそも,「造形遊び」って何?------------------
以下,造形教育研究会のWebサイトより引用

解説『図画工作編』p.26 より
造形遊びをする
 児童は,自ら身の回りの世界に進んで働きかけ,いろいろと手掛けながら,自分の思いを具体化するために必要な資質・能力を発揮している。
 そこには心と体を一つにして全身的に関わりながら,多様な試みを繰り返し,成長していく姿がある。
遊びがもつ教育的な意義と能動的で創造的な性格に着目し,その特性を生かした造形活動が「造形遊びをする」の内容である。
 学習活動としては,想像したことをかく,使うものをつくるなどの主題や内容をあらかじめ決めるものではなく,児童が材料や場所,空間などと出会い,それらに関わるなどして,自分で目的を見付けて発展させていくことになる。
 「造形遊びをする」では,児童が,つくる過程そのものを楽しむ中で「つくり,つくりかえ,つくる」という,学びの過程を経験している。

 

こんな風に学習指導要領上の文言で語られてしまうと難しい感じになってしまいます。でも要点だけ簡単に言い換えると要するに,子供の「思いつき」とか「ひらめき」とか「試行(思考?)錯誤」などをちゃんと価値付けましょう,そのかけがえのない価値を大切にしましょう,ということです。
 そういう,つかみどころのないモノやコトに価値を見出すのって,普通のオトナはちょっと躊躇してしまうと思います。
 作品としてカタチに残っていれば安心できるし,そういう価値もあります。でも,カタチとしては見えない価値や,ちゃんと子供を見ていないと見えてこない,“発揮中”の資質・能力もたくさんあるはず……。そこに着目できるかどうかが,フツーのオトナではない,“指導者”としての資質・能力を問われる,最初の分岐点なのかもしれません。

 

●後日談~担任の先生からの報告
 数週間後,担任の先生がこんな写真(↓)を見せてくれました。
 「子供たち,クーピー取り出して,色で遊んでました。同じ色を集めてみたり,色の順番に並べてみたりして……。この前の授業で経験したこととか,こういう風につながるんですね……」
 ホントにつながっていたかどうかはわからないけれど,割りばしとはまた違う形状のクーピーを束ねて光を通してのぞいてみたり,立てて並べてみたりしている様子を見て,やっぱり子供たちはすごいな……と思いました。〔共通事項〕にある「気付く」ことが連鎖しているようで。
 あと,こういう場面をスルーせずに報告してくれた担任の先生の気付きとか感性みたいなものもステキだな……と,しみじみ思うのでした。

公開日:2022年05月31日 16:00:00
更新日:2024年05月14日 10:28:35

カテゴリ:04-先生が足りない(-_-;)!~補欠授業奮闘記
2022年 4月 28日 (木)  先生が,足りない!~補欠授業レポート

 「○○小学校では監督までもがバッターボックスに立っている!」。前任校ではかなり長い期間,こんな風に揶揄され続けていました。
 先生が足りない,かといって授業に穴をあけるわけにはいかない。でも,やっぱり先生が足りない。だから校長が補欠授業に入る……。まあ,そこまで行かなくても,15人制のラグビーを12,3人で戦うような状況は横須賀の小学校では,それほど珍しいものではありません。普通に考えたらとても勝ち目のない戦いになるのですが,そんなことは言っていられません。ギリギリの状態ででも,戦い続けなければなりません。
 というような諸事情が本校にもあって,今日は2年生の算数授業の補欠に入りました。ミッションは“自習監督”ではなく“授業”です。お題は「ひっ算~たし算の しかたを 考えよう」。
 1年生で学習した2位数の加法(2ケタどうしの足し算)を踏まえて,それを筆算でやってみる。筆算でやることのご利益をあれこれ実感しながらその先のステップ(繰り上がりなど)へ……,というのが,この単元のねらいです。

 補欠授業に入るのが決まったのは朝イチの段階。3時間目の授業本番までに何とか準備をしなければいけません。他の先生があらかじめ用意してくれていた掲示用の教材の仕上げを何とか済ませ,本時のねらいをささっと把握して授業の流れとゴールを考えます。種々の決裁業務を終えてからだったので,教材研究に費やすことができたのは正味30分ほどでした。
 「そんなことでいいのか!?」「けしからん!」とおしかりを受けそうですが,これが小学校の実態です。特に経験の浅い先生たちは,日々の授業がほぼもれなくぶっつけ本番になります。単元固有の指導ノウハウとは別に“教科横断的”な指導技術は蓄積されるので,“ぶっつけ度”の中身は改善されていくのですが。
 同じ授業を複数のクラスで改善しながら実践できる中学校の先生に比べると,かなり不利な条件です。

 肝心の授業の方は,というと……
まずは何より,“飛び入り”の授業者を温かく迎えてくれた児童の皆さんに感謝したいと思いました。
 前時の既習事項の把握が不完全で流れが滞ってしまったり,ノートの使い方の指示が曖昧(中学生向けだったら「そんなの自分で考えろ」で終わってしまうのだけど低学年ではそういうわけにいきません)で“質問の嵐”になった時も辛抱強く付き合ってくれたり……。
 前時のおさらいを踏まえて,練習問題に取り組んだ後,次時への“つなぎ”のフェーズに入ります。
二ケタどうしの足し算の場合は,数を縦にそろえて計算すれば,「横」の時よりラクにできる,というのが分かったのはよいとして……,
 「じゃあ,二ケタと一ケタの足し算の時はどう書いたらよいの?」 ということになります。この発問に応えてくれた児童に,そのまま「筆算」の形に板書してもらうと……。
 「えっ?」「エッ?」「え゛っ?」「えーっ?」……いろんな「え」が飛び交い始めました。
 (ムムッ,まあいろいろあったけど,オイシイ終わり方ができそうだぞ!!)
 「あれれ?,いろんな“えっ?”が飛び交ってますねぇ,なんの“エッ?”なのかなぁ……。みんな“エ?”って言ってるけど,どう?(板書してくれた“彼”に)」……というような形で,まとめ(体よく言うと「オープンエンド?」)ました。
 次の授業はきっと,この「えっ?」からの展開になると思います。どうぞお楽しみに!

★学習指導要領上の位置づけ
2 内 容
A 数と計算
(2)加法及び減法に関わる数学的活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 次のような知識及び技能を身に付けること。
(ア) 2位数の加法及びその逆の減法の計算が,1位数などについての基本的な計算を基にしてできることを理解し,それらの計算が確実にできること。また,それらの筆算の仕方について理解すること。

 

公開日:2022年04月28日 16:00:00
更新日:2024年05月14日 10:29:33